活動報告 山梨慢性腎臓病研修会2014


 
 

山梨慢性腎臓病研修会2013 平成25年3月10日(日)13時〜 山梨県立中央病院 2階多目的ホールにて

 2014年の山梨慢性腎臓病研修会は、平成26年4月6日に山梨県立中央病院の2階多目的ホールで開催されました。講演は4演題あり、CKD診療における多職種の取り組みを最新の事例を通じて学ぶことが出来ました。
以下に各々の講演の大まかなまとめと感想を記載させて頂きます。

 山梨大学小児科の沢登先生は東田先生と一緒に設立からご尽力なさった甲府市の学校検尿システムについて講演されました。これは先生方が中心となって作った甲府市の学校腎臓病検診の仕組みで2012年から稼働しています。山梨県小児科医会、甲府市医師会,教育委員会、臨床検査センター(医師,検査技師,超音波検査室長)、小児糖尿病専門医等で形成される甲府市学校検尿運営委員会が運営に当たっています。一次検尿、二次検尿で異常が見られる場合、三次検尿では講習を受講した開業の先生達(腎臓検診協力医療機関=学校検尿登録医)が担当することで三次健診の質を高めています。また緊急を要する疾患への対応も担保されており、学校検尿で見つかる腎疾患の効率的な拾い出しに成功しています。小児腎臓病専門医と開業医、行政が一体となり初めて可能となった小児腎臓病対策の成功例のご報告でした。参加者の多くが「こんな仕組みを大人でも是非実現したいものだ」と感じました。

 

 京都大学付属病院の幣先生は糖尿病食事療法のための食品交換表第7版改訂ポイントを中心に話されました。以下の事はご講演の中で特に強調されていらっしゃいました。1)摂取エネルギーの適正化は肥満の是正などに重要であるが、血糖のコントロールがそれでもうまく行かない場合は各食事の糖質量の平準化が必要であり、そのためには基礎カーボカウントの考えも時に必要である。2)食事において蛋白、脂質の摂取も考慮されて行われるべきであってカーボカウントの考え方は低炭水化物食や糖質制限食のように単純に糖質を減らす食事管理方法ではない。糖尿病透析予防についても言及され、3)「血糖値以外に問題意識の乏しい患者であっても多職種によるチーム医療を実践する事に依って脱落しそうな患者を協働してサポートして継続した療養指導が続けられる様に導く事が必要である。」と結ばれました。

 

  FROM-J研究はかかりつけ医の非腎臓専門医と腎臓専門医の協力により慢性腎臓病患者の重症化予防の為の診療システムの有用性を検討する全国規模の研究で、厚生労働省の肝いりで筑波大学の山縣先生を中心に日本医師会,日本腎臓学会、日本栄養士会の多くの先生方が参加しています。この研究ではかかりつけ医での診療において「(通常は)管理栄養士のいない環境で如何に食事指導を行うか!?」が重要な問題です。このため非常に実践的な『栄養指導マニュアル』が作成されています。今回のご講演はこのマニュアルに沿ってなされました。参加した栄養士だけでなく看護師にも非常に参考になり多くの刺激をうけました。

 

 大野先生は腎機能低下患者への薬物投与の基本的な考え方についてお話しされました。まず強調された事は添付文書やガイドラインに沿った治療が必ずしも正解とは言えないという事です。しばしば腎機能患者での薬物動態が明確でない中で患者の腎機能と薬物の腎排泄寄与率を正確に評価して一つの情報だけに依存しない事が重要であると話されました。特に幾つかの薬剤に関して取り上げて添付文書の記載が如何に不十分でmisleadingなものであるかを示されました。Giausti-Hayton法は有名な薬物投与設計の理論ですがこれの解説もされました。最後に強調された事は薬剤師がカンファレンスなどにおいて積極的に治療に参加する事の重要性でした。参加した多くの薬剤師さん達には大変刺激になった内容だったと思われます。

 

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