活動報告 山梨慢性腎臓病研修会2013


 
 

山梨慢性腎臓病研修会2013 平成25年3月10日(日)13時〜 山梨県立中央病院 2階多目的ホールにて

 2013年の山梨慢性腎臓病研修会は、平成25年3月10日山梨県立中央病院の2階多目的ホールで開催されました。CKDにおけるチーム医療をテーマとして、一般講演が5演題、特別講演が1演題でした。参加人数は、158人で多くの参加を得て活気ある講演会になりました。CKD診療におけるチーム医療の重要性を先進の事例を通じて学ぶことが出来て収穫の多い研修会になりました。会場を後にする参加者の胸には、チーム医療への熱い思いが溢れていたと信じています。
以下に、各々の講演の極めて大まかなまとめと感想を記載させてもらいます。

 安田先生は、日本慢性腎臓病対策協議会の事務局を担当されており、日本のCKD対策で文字通り中心的な役割を果たしていらっしゃる先生です。臨床面では、日本のCKD対策のメッカである名古屋大学でCKD地域医療連携システムを立ち上げていらっしゃいます。YCKDIの活動にあたり、安田先生に多くの貴重なアドバイスを頂いています。さて、当日の安田先生のご講演はCKDの頻度と社会的重要性、eGFR産出の有用性から始まり、メタボリック症候群、糖尿病、心疾患、喫煙との関連など多岐にわたる臨床的な知見を含んだ総合的なお話しでした。最後にeGFRを処方箋やお薬手帳に記載して薬剤師を巻き込んだ医療連携の方法を紹介してくださいました。

 清水先生は、お薬手帳を使ったクリニックと薬局の間の医療連携を発表しました。お薬手帳に判子を押して、eGFRと蛋白尿を記載するという極めて単純な方法です。この方法ですとCKD診療にもっとも重要な二つの情報がクリニックと薬局の間で供給する事が出来ます。多くの調剤薬局の薬剤師さんが、eGFRのデータを知らずに調剤をしているという、とんでもない状況を解消することができる有効な方法だと感じられました。この運動の名称はCKD21という名称で、現在10のクリニックと11の調剤薬局の間で行われているそうです。今後さらなる発展を期待したいと思いました。

 寺松先生は、腎機能低下の患者さんに薬剤を処方する場合の処方設計の方法について、また、服薬指導の方法について基礎から教えて下さいました。その中で特にクレアチニンや、eGFRのデータを解釈する上で、注意点(性別、年齢、体格)についてわかりやすくご講演いただきました。この内容は、山梨県内でも数多く行われるCKDに関する講演会の中で、実は、何となく曖昧にされている分野です。「目からうろこ」の感じを抱いた参加者が多かったと思われます。また、薬物体内動態の検討のために採血の重要性も適されていらっしゃいました。

 東森先生は、近江八幡市立総合医療センターのCKD教育入院の立ち上げに際し、八田告先生と一緒に栄養指導のシステムをつくり上げた管理栄養士さんです。私は、八田先生から東森さんを「癒しの栄養士さん」と紹介されたことがあります。ご講演もその暖かいお人柄そのままで、随所に患者さんの立場にたったわかりやすい指導の工夫がちりばめられたものでした。時々栄養士さんの中に患者さんから「指導を聞きたい」と希望の出る栄養士さんがいます。CKDのチーム医療での栄養士さんの重要性が認識できました。

 井本先生は、近江八幡市立総合医療センターのCKD診療で看護師長をされています。CKDの保存期の外来、教育入院、そして透析のシステムのなかで、中心的な役割を担っている看護師さんです。私は、八田先生から以前、井本さんを「炎の看護師さん」と紹介されました。外来―入院―透析を共通のスタッフが担当するという事は患者さんにとっても非常に心強い事です。診療の継続性という意味からまぎれもなく重要なポイントです。現場で問題点を整理して、周りのスタッフと十分に話し合って解決していく姿勢に共感を覚えました。「炎」と言っても「周りに人が集まりたくなる暖かい炎」のようでした。研修会に参加した多くの看護師が力づけられました。

 濱田先生は、特別講演の安田先生とともに名古屋大学のCKD外来の中心となって、活動している看護師さんです。CKD患者さんに対して外来で看護師のできる多くの働きかけについて理論立てて解説してもらいました。特に運動に関してはその理論、実際の働きかけのやり方、そしてアウトカムについてご自身の研究成果を披露していただきました。CKD患者さんも運動は、やれば体に良い事は何となく理解していても実行し、維持して(行動変容)いくようにもっていくことは容易ではありません。昨年YCKDIで開催した市民公開講座でも、自治医科大学の安藤康宏先生が運動の重要性に関して講演なさいました。「CKDと運動」は、確かにこれからもっと力を入れていかなければならない分野だと思われました。

 

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